「お腹の中に氷を入れられているみたいに冷たい」
今回は、そんな異常な冷えに長年悩まされた49歳女性の漢方治療例です。
呼吸する息まで冷たく感じ、手足も冷え切っていましたが、漢方薬の調整によって約1ヶ月で大幅に改善しました。
なぜここまで強い冷えが起きたのか、処方の考え方と経過を詳しく解説します。
✅️ この記事で分かること
1.お腹が氷のように冷たく感じる症状の実例
2.冷え性と胃腸機能の関係
3.附子理中湯・大建中湯・酸棗仁湯の役割
4.睡眠改善が冷え性回復に重要な理由
5.漢方薬1ヶ月で改善した経過
※スタンフォード大学の博士、李宗恩中医師1の漢方薬治療例、幾年來肚子非常寒冷不舒服 – 當張仲景遇上史丹佛(07/31/2013発表)を李哲が完全翻訳しました。
お腹が氷みたいに冷えるのは漢方薬1ヶ月で著しく改善
患者さんの主な症状
初診は2013-6-10。
患者は49歳の女性、中国人。
主訴:ここ数年間、お腹の中が氷みたいに冷たくて、違和感を覚える。
西洋医学、中医学の先生に診てもらったけど治っていない。以前は「附子理中湯」を飲んだあと、改善が見られたそうです。

ほかの症状は、
- 呼吸するとき、息まで冷たい。
- 顔には大きな黒斑がある。
- 両側のそけい部と腰回りは重だるくて、はっている感じ。
- 以前は心臓の不調があった。
- 普段ゲップが出やすい。
🔎合わせて読みたい:げっぷが止まらない原因は心臓と胃の不調だった症例
中医学の問診内容
以下は問診内容です。
寒熱:手足、体とも寒い。
汗:正常、寝汗をかかない。
睡眠:夜11時半に布団に入るけど、すぐ寝つけられなくて、一晩中寝られない時もある。また、途中覚醒があり、尿意で起きる事が多い。起床後は非常に疲れて、たまにはめまいがする。
食欲:お腹が空かないけど、食べられる。ヨダレが多くて、よだれが冷たい。
便通:1日1~2回、便の量が少ない、形はある。食べる割には便が少ない。
尿:尿量が少なくて、尿の勢いがない。
口渇:喉は渇かない。
生理:閉経して2年経っている。以前は3週間に1回生理が来た。当時は血の塊が多かった。
🔎合わせて読みたい:尿の勢いが弱い症状と難聴が改善した高齢男性の症例
脈診、舌診と処方内容
脈診:遅い、少し無力。
舌診:舌苔は白で薄い、舌の真ん中あたりに裂けた溝がある。患者さんが附子理中湯を飲む前は、舌苔だもっと白くて分厚かったそうです。
眼診:腎臓の反射区は正常、肝臓は大きすぎ。心臓の反射区は平らで薄い。
触診:肝臓、脾臓の腹診は正常。三陰交穴、血海穴は圧痛なし。
処方箋:生のトリカブト(生附子) 乾姜 炙甘草 加工したトリカブト(炮附子) 生姜 人参 白朮 茯苓 蜀椒 細辛 烏薬 呉茱萸湯 川芎
お腹が少し温かくなってきた
2013ー6ー20
患者さんの報告:漢方薬を飲んだあと、ほてりがあった。お腹は少し熱くなったけど、下腹部はまだ冷たい。右足くるぶしから足指までは寒い。左腰・左膝は重だるくて乳房も寒く感じる。
睡眠:夜中2~3時は、両足のムズムズ違和感で眠れない。
脉診:平、少し力強くなった。
舌診:舌苔は白、舌の前は少し腫れて大きい。
処方箋:既製品の附子理中湯+酸棗仁湯+大建中湯。
お腹が温かくなり、腰が抜けそうな感じも改善
2013-7-2
患者さんの報告:たくさん改善が見られた。お腹は熱くなり、腰が抜けそうな感じは前より良い。左手と右足だけ、比較的に力がない。
便通:正常。
脉診:少し緩、弱、尺脈はある。
舌診:湿気が見える、舌苔はない、舌の前は少し腫れて大きい。
処方箋:加工したトリカブト(炮附子) 人参 乾姜 炙甘草 白朮 蜀椒 茯苓 細辛 桂枝 遠志 柴胡 玉金 川芎 竜骨 牡蛎 なつめ 生姜

お腹、両足とも温かくなった
2013-7-5
処方箋:前回同様。既製品の附子理中湯+酸棗仁湯+大建中湯
2013-7-15
患者さんの報告:
お腹、両足とも暖かくなってきた。
たまに寒く感じるけど、前よりずいぶん良い。
李哲の中医学的考察
お腹の中が冷たく感じる原因とは?
患者さんは、お腹だけでなく手足も冷え、呼吸する息まで冷たいと訴えていました。中医学では、このような症状は胃腸と心臓の働きが相当弱って、体を温める力が不足した状態と考えます。詳細は以下の解説記事をご覧ください。
実際に処方された漢方を見ると、附子理中湯や大建中湯など、胃腸を温めることを重視した内容になっています。そして胃腸が温まるにつれて、お腹の冷えだけでなく足の冷えも改善していきました。
また、この症例では不眠もありました。睡眠不足が続くと体の回復力が落ちるため、胃腸を温めるだけでなく、睡眠の質を改善することも大切だったと考えられます。
李宗恩博士の処方に関する説明
上記の処方箋には、いろんな処方箋の影が見えます。
四逆湯、呉茱萸湯、附子理中湯+酸棗仁湯+大建中湯など。
四逆湯の構成:
- 乾姜
- 炙甘草
- 生のトリカブト

呉茱萸湯の構成:
- 呉茱萸(ゴシュユ)
- 人參( ニンジン)
- 大棗(タイソウ)
- 生姜(ショウキョウ)
附子理中湯の構成
- 附子(ブシ)
- 人参(ニンジン)
- 白朮(ビャクジュツ)
- 乾姜(カンキョウ)
- 甘草(カンゾウ)
大建中湯の構成:
- 人参(ニンジン)
- 山椒(サンショウ)
- 乾姜(カンキョウ)
- 膠飴(コウイ)

初回処方に含まれていた温熱薬の特徴
1回目の処方箋はすごいです。
生のトリカブト(生附子)、乾姜 、炙甘草 、加工したトリカブト(炮附子) 生姜 人参 白朮 茯苓 蜀椒 、細辛、 烏薬、 呉茱萸、 川芎。
下線を引いた生薬は全部熱々のもの。恐ろしい強烈な「爆弾」です。しかし、飲んだ後にほてる反応が出て、予想した効果が出ない時は、何かが間違ったことを示します。幸いにも、患者の睡眠に関する報告があったので、処方箋を正しい方向に導くことができました。
睡眠を良くする酸棗仁湯と胃腸を温める大建中湯+附子理中湯。10日飲んだだけで著しく改善されたのです。

当院では大建中湯を飲んだ患者さんは、一人いました。腸閉塞の腹痛で、病院の先生に処方されたそうですが、残念ながら効果はなかったです。これは大建中湯が効かないのではなくて、日本の粉薬は成分が薄いから効かないだけです。腸閉塞の患者の症例は、以下をご覧ください。
睡眠改善が症状回復を後押しした理由
2回目の処方は、1回目のより穏やかな漢方薬だと言えます。なぜ穏やかなのに、逆に効果が良かったのか?これは研究する必要があります。
私が思うのは、睡眠の質が改善されたのが大きな違い。温める生薬は、もちろん必要だけど、何よりも睡眠の質を確保するのが最重要のこと。
酸棗仁湯は睡眠を改善しますので、大事な役割を担ったと言えるでしょう。

睡眠の質に関して、余談話があります。鍼を刺したあと、僅かの15分~20分寝ても、スッキリ感が違う。以下の記事、参考になると幸いです。
大建中湯と附子理中湯を併用した理由
大建中湯。
附子理中湯。
2つとも胃腸を温める処方箋として有名です。同時に2つを使ったのは、あまりにもお腹の冷えが強いからだと思います。
胃腸が冷えるとなぜ冷え性になるのかは、手足が冷たい原因は、心臓と脾胃の弱まりにあるをご覧ください。
追記:最近、諸事情で忙しくて記事を書く時間が減っています。施術の合間を縫いて、少しずつ記事を完成しますので、しばらくお待ち下さい。
追記:冷え性に良い食べ物
手足が冷える、お腹が冷たい。
漢方薬、鍼灸は縁がなくてまだ試してない方。
自力で治せる食事法があります。それは羊肉を工夫して食べること。以下の記事には、薬膳の作り方も書いてあるので、参考になると幸いです。
冷え性・手足の冷えを改善した症例集
👉️便秘・生理痛・冷え性が改善し、朝スッキリ起きられるようになった症例
👉️ひどい冷え性と生理痛が改善し、気分まで明るくなった女性の症例
👉️血尿・ひどい冷え性・坐骨神経痛が改善した53歳女性の症例集
👉️手足が氷のように冷たくなる症状を漢方薬1週間で改善した症例
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李宗恩博士はアメリカ・カリフォルニアの著名な中医師。数々の難病・がん治療で高い臨床効果を出して、中医学の普及のために記事を書か続けて、研修医たちも育てている素晴らしい先生です。李宗恩博士の診療所情報は、以下の記事で説明しているので、どうぞご参考にして下さい。オススメの漢方医・鍼灸医(海外)

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