風邪の初期に使われる漢方薬「葛根湯」。
実は、肩こり・首こり・悪寒・頭痛・汗が出ない風邪の初期にもっとも効果を発揮します。
特に「首肩の強いこり+悪寒+汗なし」が揃うとベストタイミングです。
葛根湯は体質が合えば 30分〜2時間で肩こりや悪寒が軽くなる即効性があります。
逆に、汗が出ている・身体が熱い・冷たい水を飲みたがるなどの「風熱タイプ」では悪化します。
この記事では、
葛根湯がなぜ肩こりや風邪に効くのか?
7つの生薬がどう共同作業して症状を改善するのか?
を中医学の視点から詳しく解説します。

葛根湯の効果・効き目(肩こり・悪寒・風邪の初期)
葛根湯は「悪寒・肩こり・首こり・頭痛・汗が出ない風邪の初期」に最も効果があります。
特に「首肩の強いこり+悪寒+汗なし」が揃うとベストタイミングです。
葛根湯は体質が合えば「30分〜2時間」で肩こり・悪寒が軽くなります。
効かない場合は「汗が出ている」「風熱タイプ」など適応症が違うケースがほとんどです。
傷寒雑病論に書いてある適応症
『傷寒雑病論』の原文を見ましょう。
- 【太陽病,项背强几几,無汗,悪風者,葛根汤主之」
- 【太陽為之病、脈浮、頭項強痛而悪寒】
『傷寒雑病論』1の原文より引用。
葛根湯の適応症、処方するタイミングは何種類かあるけど、ここでは一番大事な条文だけ載せました。
上記の古文を直訳すると、脈が浮いて、頭・首が痛い。悪寒。首肩背中がバキバキで汗をかかない。風を嫌がるときは葛根湯を使う。
葛根湯が肩こりに効く理由(筋肉の渋滞=痛則不通の改善)
多くの肩こりは運動不足、冷えによる気血の渋滞です。気血の渋滞が続くと筋肉を潤う津液が足りなくなり、かたまって痛みが出ます。中医学では「痛則不通」と言います。
葛根湯の生薬、
- 葛根が津液を上に運ぶ→筋肉を潤う
- 麻黄+桂枝で筋肉の隙間を開く→溜まった老廃物を汗から出す
- 芍薬で静脈血を戻す → 首肩の渋滞(痛則不通)を解消する
この共同作業で肩こりを改善できます。
典型的なのは「冷え・悪寒・首肩の強いこり・背中の張り」が同時にある肩こり。
一方、熱がこもるタイプには向きません。
葛根湯が風邪に効く仕組み(生薬7種の共同作業)
葛根湯の組み合わせ
先に生薬の組み合わせを説明します。
- 葛根四两
- 麻黄(去节)三两
- 桂枝(去皮)二两
- 生姜(切)三两
- 甘草(炙)二两
- 芍薬二两
- なつめ(大棗)十二枚
葛根湯の7つの生薬の役割と性質を詳しく解説
葛根は細長い植物で、ほかの木にくっついてて、一番上まで上がります。葛根の性質は、下の水(津液)を高いところまで運べる。

麻黄は肺を広げる作用があり、肺活量は増やして深呼吸ができます。だから、喘息・肺気腫・肺がんなどの肺疾患には麻黄がないと治せません。麻黄一人では汗が出ないけど、桂枝と手を組んだ場合は、外側の皮膚の穴を開けて汗をかかせることができます。
桂枝の味と香りは「辛甘」。『黄帝内経』2で定義したのは、「辛甘発散為陽」。つまり、桂枝は陽に属する生薬の代表。
芍薬の味と香りは「酸苦」。『黄帝内経』で定義したのは、「酸苦湧瀉為陰」。つまり、芍薬は陰に属する生薬の代表。

体の血液循環で見ると、陽というのは血液を出す動脈系。陰というのは血液を回収する静脈系。
桂枝は陽の代表なので、心臓の強化ができて、心拍出量を増やします。また、桂枝は香りが強いので発散効果があり、筋肉の隙間を広げて中の古い津液(水分)を汗から出すことができます。
芍薬は陰の代表で、主に静脈の血を心臓に戻す作用がある。桂枝と芍薬がパートナーになると、動脈血と静脈血の流れが早くなります。
生姜、炙甘草、なつめは医食同源の代表。胃腸にとても良いです。

炙甘草のほかの効能は、
- 強心作用があり、一番大事な心臓を守る。
- 甘草は胃腸の解毒作用がある。風邪を引いたときに、消化不良で胃腸に溜まっている食べ物の毒素を分解します。(風邪をひくと食欲不振になる人が多い)
葛根湯の生薬がチームで風邪を追い出す仕組みを図解
一つの処方に集まった生薬たちは、どんな共同作業を行うのかを説明します。
①桂枝と芍薬は、動脈血と静脈血の流れを早くする。
②麻黄は皮膚の穴を開けて、桂枝は筋肉の隙間を開ける。
この2つがパートナーになると、筋肉の間と皮膚下に隠れている風邪を外側に追い出せる。

③葛根は胃腸の良い津液(水分、中には免疫細胞もたくさんある)を、一番高い首肩・頭まで運んで来て、古くなった津液(水分)を代謝して新しいのを補充し、首肩の痛みを治す。
④葛根が津液(水分)を汲み上げると同時に、胃腸の良い津液(水分)がなくならないように、生姜・なつめ・炙甘草で補う。
⑤同時に炙甘草で胃腸に余っている食べ物の毒素を分解し、臓器の負担を減らす。

⑥同時に風邪が転移できないように、炙甘草で心臓の強化をする。
中医学の理論で風邪がひどくなるのは、ほとんど心臓のせいです。たとえば風邪を引いたときに、大げんかしたり悩んだりして心臓に負担をかけると、風邪はなかなか治らない。もしくはひどくなる。
以下は描いた簡易図です。

共同作業の流れを見れば分かりますが、単なる個人作業ではなくて複雑な共同作業です。処方の仕組みは、至り尽くせと言っても過言ではない。
様々な面を配慮しながら、免疫力も傷つけず風邪のウィルスを外に追い出します。
こんな処方を組み立てた人、すごいと思いませんか?
葛根湯が効かないケース(汗が出ている/風熱)
上記の古文と直訳から見れば分かりますが、葛根湯は適応症があります。適応症があれば、効かないケースもあるわけです。
具体的に言うと、
- 汗が出ている
- 暑がり
- 身体の中が熱い
- 冷たい水を飲みたがる
- 熱がこもっている感じがする
この場合は葛根湯を飲むと逆にひどくなります。
風邪の引き始めには葛根湯!
というキャッチフレーズもありますが、鵜呑みにしないでください。必ず適応症を確認してから飲みましょう。
葛根湯と他の風邪漢方の違い(桂枝湯・麻黄湯など)
葛根湯は風邪を治す唯一無二の処方ではない。
風邪=葛根湯ではないです。
葛根湯とほかの漢方薬との違いは、中医学の第一人者、ニハイシャ先生3が書いた小論文にあります。ぜひメモしてください。風邪のときには役に立ちます。
風邪を治す漢方薬はたくさんある
ほかにあるのは、桂枝湯(けいしとう)、麻黄湯(まおうとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、大青竜湯(だいせいりゅうとう)、小柴胡湯(しょうさいこうとう)、越婢湯(えつぴとう)が代表的。
麻黄湯の症例は、麻黄湯すごい!悪寒・発熱・全身が痛い・鼻水が出る集団インフルエンザをたちまち治した例をご覧ください。
さらに、以上の処方をもとにして変換するのがあります。
たとえば、桂枝二麻黄一湯、桂枝二越婢一湯、桂枝麻黄各半湯、桂枝去芍薬湯、桂枝去桂加茯苓白朮湯、桂枝加厚朴杏仁湯、桂枝加葛根湯、桂枝加附子(トリカブト)湯、越婢加朮湯、葛根加半夏湯……
皆さんは驚くかも知れません。
「なにこれ???」
「風邪の処方だけで、こんなに多いの?」
「西洋薬は全部タミフルとか、誰でも同じ薬だけど?」
🔎あわせて読みたい:タミフルの嘘、インフルエンザ特効薬なんて詐欺だ!
風邪の漢方薬処方箋が多い理由
漢方薬の処方箋が多いのは、風邪の性質が特殊だからです。中医学言葉でいうと、「風善行而多変」。直訳すると、風邪はアチコチ移動する遊走性があり、非常に変化が多い。西洋医学の言葉でいうと、風邪のウィルスは種類が非常に多いです。
同じ人物でも、去年と今年の風邪の症状が同じだと限らない。つまり、同じウィルスにかかるとは限らないのです。
一人ひとりの症状に合わせるオーダメイド式。これは、もっとも合理的で科学的な治療法です。西洋医学の万人に同じ薬を出すやり方とは、天と地の差。
中医学の風邪の考え方(衛気・風邪の侵入ルート)
風邪(ふうじゃ)とは何か?中医学の基本概念
なぜ風邪を引くのかを簡単に説明します。
西洋医学では風邪はウィルスが原因だと言うけど、中医学は簡単に風邪と定義しています。風邪の詳しい解説は以下をご覧ください。
衛気(えいき)が体を守る仕組み
中医学の定義では、体の表側、つまり皮膚のところには「衛気」という気が走っています。この「衛気」は、ついたてみたいに体の表側を守る役割がある。
衛気が弱くなると、風邪(ふうじゃ)が隙間から入り込んで、人は風邪をひきます。風邪はカゼ以外に蕁麻疹も引き起こしますが、今回はかぜだけにします。蕁麻疹関連情報は以下をご覧ください。
風邪(ふうじゃ)が体に侵入するルート(首肩・背中)
寒い風にあたった時、後ろの首と背中がゾクゾクして悪寒などする経験はないでしょうか?
中医学で言うのは、風は全身の皮膚の穴から入れるけど、もっともよく外から入るルートは首肩と背中の後ろ。首の後ろには、風門・風府・風池などのツボがあります。その意味は風邪(ふうじゃ)が入る場所。だから、風邪を引くと首肩が先に辛くなりやすいのです。

風邪で汗が出ない理由(皮膚の穴が閉じる)
風邪を引いたとき、汗をかかないのは風邪(ふうじゃ)(西洋医学でいうウィルス)のせいで、皮膚の穴を締めているからです。
頭・首肩、背中の痛みが生じるのは、皮膚下の筋肉の間に流れる津液(水分)の代謝が悪くて渋滞しているから。つまり、つまっているから痛い。中医学では、これを『痛則不通』だと言います。
そんなの科学的根拠がない!
かぜは風邪から来ていると信じない方は、実験してみれば分かります。
扇風機の風、もしくは冷房の風を首肩の後ろに当ててみてください。しばらく経つと、全身が辛くなり翌日には風邪をひきます。
実験する前に、葛根湯を買っといてくださいね。風邪を引いてフラフラになったら、買いにもいけません(笑)

鍼灸で風邪が治る理由(関連記事リンク)
風邪を引いたら葛根湯などの漢方薬を思い出す人はいるけど、「鍼治療に行こう!」と最初に思う人は少ないでしょう。理由は簡単ですが、鍼で風邪を治す鍼灸師が少ないから。
漢方薬以外にも、中医学のもう一つの柱である鍼灸でも風邪は驚くほど早く治せます。
当院では風邪、インフルエンザ、コロナ…様々な患者さんを治療して来ました。当院の常連さんは、みんな風邪を引いたら、持病のついでに一緒に治す感じ。以下は一部の症例、参考になると幸いです。
🔗風邪の熱を下げるツボ「大椎穴」|子どもの発熱と咳が鍼1回で改善した症例
🔗20日も治らないコロナの咳、喉の痛みは鍼1回でだいぶ良くなり、小青竜湯と桔梗石膏を併用して完治
🔗風邪の鼻詰まり、だるいのは鍼1回で治り、元気になって帰った男性
🔗風邪で喉が熱くて痛い女性、外関を刺したらすぐ治った面白い鍼灸症例
- 傷寒雑病論の解説は、傷寒雑病論の詳細:歴史的偉大さと衝撃的な影響をご覧ください。 ↩︎
- 黄帝内経の解説は、黄帝内経:古代の叡智が教えてくれる、体の「宇宙リズム」をご覧ください。 ↩︎
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倪海厦(ニハイシャ)先生(1954—2012)はアメリカの著名な中医学先生。漢方・鍼灸・風水・占いに精通した天才。倪海厦(ニハイシャ)先生の生涯を紹介しますで詳しく書きましたので、よかったらご覧ください。

コメント
コメント一覧 (8件)
葛根湯。こんなにわかりやすく生薬を説明いただき、感動です。
保存版にさせていただきます。<(_ _)>
id:hanak50kamoto
岡本 花子 さん
コメントありがとうございます。
分かりやすくなっていて良かったです。ぜひ葛根湯を活用してください。
id:kasandeeY
kasandeeYさん
ブコメありがとうございます。
役に立つ情報で嬉しいです。
id:sunaowamuteki
sunaowamutekiさん
ブコメありがとうございます。
葛根湯は風邪にとても良いです。合っているときは一発で効くので、ぜひ活用してください。
id:torute3
とるてさん
ブコメありがとうございます。
ためになる記事で嬉しいです。
id:bumeesha
bumeeshaさん
ブコメありがとうございます。
そうですね。漢方薬では超耐性菌が生まれないので、数千年経った今でも有効です。
今後はぜひ、いろんな漢方薬を試して見てください。
id:momotooranda
momoさん
ブコメありがとうございます。
風邪のひき始め、葛根湯を飲む方は多い感じです。症状があっていれば、とても良いと思います。
お守りがわりになるとはすごいですね。葛根湯以外に、ほかの漢方薬もぜひ使って見てください。
id:mizutamado
みずたま堂ひなた さん
ブコメありがとうございます。
分かりやすい説明になっていて良かったです。
葛根湯は風邪に効くので、今後風邪を引いたときに症状があっていれば、使って見てください。きっと効果バツグンだと思います。